案件の概要
XX有限会社は25類服装等の商品について英文商標を出願した。商標局は同商標の中国語が「インド産の薄い綿織物」を意味し、指定商品について容易に公衆の誤認を招くと考え、「商標法」10条1項8号に基づいて商標登録を却下した。このためXX有限会社は商標評審委員会に審査請求を申し立てた。商標評審委員会は同商標は全体として「古代インド高品質綿、インド産の薄綿布」を意味し、これを衣料等の商品に使用すると、消費者が容易に指定使用商品の産地、原材料を誤認して購入し、社会に悪影響を及ぼすため、「商標法」10条1項8号に規定する事由にあたると判断した。XX有限会社はこの決定を不服として、中誉に委託し、北京市第一中級人民法院に訴訟を提起した。
案件の結果
北京市第一中級人民法院は商標評審委員会の不服審査決定を取消し、不服審査決定をやり直すことを命じた。現在、本件商標はすでに商標局の審査を経て登録された。
案件の争点
1.本案件は、「商標法」10条1項8号の「悪影響を及ぼすもの」にあたるか。
2.外国語商標の意味を判断する際に、中国の公衆の当該用語についての一般的な認知能力を考慮すべきか。
法院の見解
争点1について
法院は、「商標法」10条1項8号の規定は公共の利益および公共秩序の維持に基づくもので、私権の保護を目的とするものではない。本件商標は中国の政治、経済、文化等社会公共の利益および公共秩序に対し、消極的、マイナスの影響を及ぼすものではない。
争点2について
法院は外国語の意味を判断する際、中国の公衆の当該用語についての一般的な認知能力を考慮すべきである。たとえ百度百科、有道、オンライン翻訳等により本件商標が「古代インド高品質綿、インド産の薄綿布」を意味を有することを証明できるとしても、同用語は「オクスフォード高級英漢双解辞典」、「ロングマン現在英語辞典」等権威ある英漢辞典に収録されておらず、中国の公衆は本件商標を「古代インド高品質綿、インド産の薄綿布」と識別することはかなり難しい。よって、中国の公衆が本件商標の用語を見た時に、その中国語の意味に基づいて指定使用商品の産地、原料に誤認を生じることはない。