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北京市高級人民法院《特許権侵害判断ガイドライン》

by:Posted:2014-10-21

北京市高級人民法院《特許権侵害判断ガイドライン》1

一、発明、実用新案権の保護範囲の特定

(一)保護範囲の解釈対象の特定

1、特許権又は実用新案権の侵害紛争事件を審理するときは、まずその権利の保護範囲を特定しなければならない。特許権又は実用新案権の保護範囲は、その権利請求の範囲に記載された構成要件により特定された内容を基準とし、それには、記載された構成要件と均等な構成要件により特定された内容も含むものとする。

特許権の保護範囲を特定するときは、特許権者が権利の根拠として主張した関係する請求項について解釈すべきである。

2、特許の独立請求項は、特許又は実用新案の技術案を全体的に反映しており、技術課題を解決するために必須の構成要件を記載するものとし、従属請求項と比べて、その保護範囲は最も広い。特許権の保護範囲を特定するときは、通常、保護範囲が最も広い特許の独立請求項について解釈すべきである。

3、1つの特許に2以上の独立請求項が存在する場合、権利者が提出した請求に基づいて、その中で関係する独立請求項が特定した保護範囲について解釈すべきである。

4、権利者が、従属請求項により保護範囲の特定を主張した場合、当該従属請求項に記載された付加的な構成要件及びその直接又は間接的に引用した請求項に記載された構成要件について、併せて特許権の保護範囲を特定するものとする。

5、構成要件とは、請求項により特定された技術案において、相対的かつ独立的に一定の技術機能を実現でき、更に相対的かつ独立的な技術的効果が奏される最小の技術ユニット又はユニットの組合せを指す。

(二)解釈原則

6、特許権の有効原則。権利者が主張した特許権が無効審決を受けるまで、その権利は保護を受けるべきであるため、当該特許権が特許法に関連する登録要件を満たさないことを無効理由として判決を下してはならない。

特許登録原簿のコピー、又は特許証書と当該年度に納付した特許年金の領収書は、特許権が有効であることを証明できる証拠である。

7、折衷原則。請求項を解釈するときは、請求項に記載された技術内容を基準とすべきである。明細書及び図面、従来技術、特許の従来技術への貢献等の要素に基づいて、特許権の保護範囲を合理的に特定しなければならない。特許権の保護範囲は権利請求の範囲の文言表現だけにこだわるべきではなく、特許権の保護範囲を、その所属する技術の分野における一般の技術者が、その出願日前に明細書及び図面を読んだ上で、創造的な労働を経てはじめて連想できる内容にまで拡大することもできない。

8、全体(全ての構成要件)原則。請求項に記載された全ての構成要件が表現した技術内容を1つの全体の技術案とし、前提部に記載された構成要件と特徴部分に記載された構成要件は、保護範囲の特定に同じ役割を果たす。

(三)解釈方法

9、特許権の保護範囲を特定するときは、国務院専利行政部門が登録公告した特許公報又はすでに法的効力が生じた特許復審請求2審査決定、無効宣告請求3審査決定及び関係する設定登録、権利確認行政判決による確定された請求項を基準としなければならない。請求項が多数の公報に存在する場合、最終の有効な公報を基準とする。

10、請求項を解釈するときは、所属する技術の分野における一般の技術者の角度から行わなければならない。

所属する技術の分野における一般の技術者とは、本分野の技術者とも称することができ、仮説された「人」を指すものであり、その者は、出願日前に当該技術分野における全ての通常の技術知識を知悉しており、当該分野における全ての従来技術を知り、かつ、当該出願日前に一般の実験手段を用いる能力を具える。

所属する技術の分野における一般の技術者とは、ある人又はある種の人を具体的に指すものではないため、文化程度、肩書き、級別等の具体的な基準を参照して当てはめることは適切ではない。当事者は、所属する技術の分野における一般の技術者がある通常の技術知識を知悉するか否か、またある一般の実験手段を用いる能力を具えるか否かについて争いがある場合、立証しなければならない。

11、請求項の解釈については、明確にする、補充する、及び特定な状況において補正するという3つの形式を含む。すなわち、請求項における構成要件で表現した技術内容が不明確であるとき、当該構成要件の意味を明確にする。請求項における構成要件を理解するにあたり欠陥が存在する場合は、当該構成要件の不足を補充する。請求項における各構成要件の間が矛盾する等、特定な状況が存在する場合、当該構成要件の意味を補正する。

12、特許の明細書及び図面は、請求項の文言で特定された技術案の保護範囲を合理的に解釈することに用いることができる。すなわち、請求項に記載された構成要件と均等な要件が特許権の保護範囲に含まれると解釈し、又は明細書及び図面によって若干の構成要件について特定することができる。

13、請求項を解釈するとき、特許の明細書及び図面、権利請求の範囲に係わる請求項、特許包袋書類及び法的効力を有する文書に記載された内容を使用することができる。

上述した方法を用いても、請求項の意味が明確にならない場合、参考書や教科書等の公知文献、及び所属する技術分野の一般技術者が有する一般的な理解と結び付けて解釈することができる。

本ガイドラインでいう特許包袋書類とは、特許審査、復審、無効審判の手続で中国国務院の専利行政部門及び専利復審委員会4が発行した審査意見通知書、特許出願人、特許権者が提出した書面回答、口頭審査記録表、面談記録等の書類を指す。

本ガイドラインでいう法的効力を有する文書とは、法的効力が生じた特許復審請求の審査決定、特許無効宣告請求の審査決定、及び設定登録、権利確認に関する行政判決を指す。

14、請求項が特許の明細書と一致しない、又は相互に矛盾する場合、当該特許は特許法第26条第4項の規定を満たさないため、当事者に、特許の無効宣告手続により解決するよう告知する。当事者が特許の無効宣告手続を始めた場合、具体的な事件の内容により訴訟を中止するか否かを決定する。

当事者が特許の無効手続による解決を望まないか、又は合理的な期間内に特許権の無効宣告請求を提起しない場合、特許権の有効原則及び請求項を優先する原則に基づいて、請求項により特定された保護範囲を基準としなければならない。但し、所属する分野の技術者が権利請求の範囲、明細書及び図面を閲読した上で、請求項による保護を実現する技術案に対して、具体的で、特定な、唯一の解釈を得た場合、当該解釈に基づいて、請求項の誤りのある記述を明確にし、又は補正すべきである。

15、従属請求項に、本来独立請求項に記載すべき発明の技術課題を解決するために不可欠な必須の構成要件(この構成要件を欠けば、独立請求項に記載された技術案は発明の目的を実現できない)が含まれる場合、当該特許は特許法実施細則第20条第2項の規定を満たさないため、当事者に、特許の「無効手続きにより解決するよう告知する。当事者が特許の無効宣告手続を始めた場合、具体的な事件の内容により訴訟を中止するか否かを決定する。

16、請求項において機能又は効果により表されている機能的な構成要件について、明細書、図面に表された当該機能又は効果の具体的な実施形態、及びそれと均等な実施形態とを結び付けて、当該構成要件の内容を特定しなければならない。

機能的な構成要件とは、請求項において、製品の部品(パーツ)若しくは部品(パーツ)間の協力関係、又は方法のステップ(工程)に対して、それが発明の創造に果たした作用、機能若しくは生じた効果を採用することにより、構成要件を特定することを指す。

一般的に、下記の場合、機能的な構成要件と認定するのは適当ではない:

(1)機能的又は効果的な文字により記述され、かつ、すでに所属する技術の分野における一般の技術者に広く知られている技術名詞のような構成要件となるもの。例えば、伝導体、放熱装置、粘着剤、増幅器、変速機、フィルター等。

(2)機能的又は効果的な文字により記述されているが、同時に相応する構造、材料、ステップ等の構成要件で記述を行う構成要件。

17、機能的な構成要件の内容を特定するときは、機能的な構成要件が明細書に記載された対応する機能、効果を実現させるために必要な構造、ステップの構成要件に特定すべきである。

18、方法特許の請求項にステップの順序を明確に特定する場合、ステップ自体及び各ステップ間の順序のいずれも、特許権の保護範囲に特定な作用を奏するべきである。方法特許の請求項にステップの順序が明確に特定されていない場合、これを理由にして、ステップの順序の請求項に対する特定な作用を考量せず、明細書や図面、請求項に記載された全体の技術案、各ステップ間の論理的関係及び特許包袋書類と結び付けて、所属する技術の分野における一般の技術者の角度から、各ステップは特定の順序に照らして実施すべきか否かを特定しなければならない。

19、製品の請求項が方法の構成要件によって特定され、方法の構成要件は特許権の保護範囲に対して特定の作用を具えている。

20、実用新案権の請求項に、非形状的及び非構造的な構成要件が含まれる場合、当該構成要件は特許権の保護範囲の特定に用いられており、当該構成要件の文言により解釈する。

非形状的、非構造的な構成要件とは、実用新案権の請求項に記載された製品の形状、構造又はその結合等に属していない構成要件を指す。例えば、用途、製造工芸、使用方法、材料成分(構成成分、配分量)等である。

21、製品の特許又は実用新案の請求項が応用分野、用途を特定していない場合、応用分野、用途は一般的に特許権の保護範囲に特定の作用を奏することができない。

製品の特許又は実用新案の請求項が応用分野、用途を特定している場合、応用分野、用途を請求項の保護範囲に対して特定の作用を具える構成要件とするべきである。但し、当該構成要件が保護を求められる構造及び/又は組成そのものに影響をもたらさず、また、当該技術案の権利取得にも実質的な作用を生じず、ただ製品又は設備の用途又は使用方法について描写を行うだけである場合は、特許権の保護範囲に特定の作用を奏することができない。

22、請求項に書き込まれた使用環境の構成要件は必須の構成要件に属し、特許権の保護範囲に特定の作用を備える。

使用環境の構成要件とは、請求項において、発明特許が使用する背景又は条件の描写に用いる構成要件を指す。

23、権利侵害で訴えられた技術案が製品の請求項に記載された使用環境に適用できる場合、当該権利侵害で訴えられた技術案は請求項に記載された使用環境の構成要件を備えると認めるべきであり、権利侵害で訴えられた技術案が実際に当該環境の構成要件を使用したことを前提としない。

24、明細書の技術用語に対する解釈が当該技術用語の通用する意味と異なる場合、明細書の解釈を基準とする。

訴えられた権利侵害行為が発生した時、技術用語にすでにほかの意味が生じていた場合、特許出願日当時の意味を採用して、当該技術用語を解釈しなければならない。

25、同一の技術用語は、権利請求の範囲と明細書にそれぞれ示された意味と一致すべきであるが、不一致の場合は、権利請求の範囲を基準とする。

26、請求項において図面にある標記を引用するとき、図面の標記による反映された具体的な構造をもって請求項における構成要件を特定してはならない。

27、特許権の保護範囲は、明細書に開示された具体的な実施形態の制限を受けるべきではない。但し、次に挙げる場合は除外される:

(1)請求項が実質上、実施形態に記載される技術案である場合。

(2)請求項が機能的な構成要件を含む場合。

28、要約は技術情報の提供を目的とし、公衆が調査を行うのに便利なものであり、特許権の保護範囲の特定に用いることはできない。また、請求項の解釈に用いることもできない。

29、出願書類の印刷の誤りが特許権の保護範囲の特定に影響を与える場合、特許出願包袋により訂正を行うことができる。

明らな文法上の誤り、文字の誤り等に対しては、請求項又は明細書の全体及び前後の文脈より唯一の理解が得られる場合、実際の状況により解釈をしなければならない。

二、特許権、実用新案権の権利侵害判断

(一)構成要件の対比方法

30、権利侵害で訴えられた技術案が特許権の保護範囲に属するか否かを判断する時、権利者の主張した請求項に記載された全ての構成要件を審理しなければならない。また、請求項に記載された全ての構成要件を権利侵害で訴えられた技術案に対応する全ての構成要件と逐一対比しなければならない。

31、権利侵害で訴えられた技術案が、請求項に記載された全ての構成要件と同一又は均等な構成要件を含む場合、それは特許権の保護範囲に属すると認定するものとする。権利侵害で訴えられた技術案の構成要素と請求項に記載された全ての構成要件を対比し、請求項に記載された1つ若しくは複数の構成要件が欠如するか、又は1つ若しくは1つ以上の構成要件が同一でも均等でもない場合、それは特許権の保護範囲に属さないと認定するものとする。

32、権利侵害の判断を行う時、特許製品を権利侵害で訴えられた技術案と直接対比をしてはならない。但し、特許製品は関連する構成要件と技術案を説明、理解するために用いることができる。

33、権利者、権利侵害を訴えられた者が、どちらも特許権を持つ場合、一般的に、双方の特許製品又は双方の特許の請求項を対比することはできない。

34、製品の特許又は実用新案に対して特許権侵害判断の対比を行う時、一般的に、権利侵害で訴えられた技術案と特許技術が同じ技術分野であるか否かを考慮する必要はない。

(二)文言侵害

35、文言侵害とは、すなわち、文言通りの権利侵害であり、権利侵害で訴えられた技術案が請求項に記載された全ての構成要件と同一の対応する構成要件を含むことを指す。

36、請求項に記載された構成要件は上位概念の構成要件であるが、権利侵害で訴えられた技術案に対応する構成要件が下位概念の構成要件である場合、権利侵害で訴えられた技術案は特許権の保護範囲に含まれる。

37、権利侵害で訴えられた技術案が、請求項の全ての構成要件を含むことを基礎として、更に新たな構成要件を加えた場合、依然として特許権の保護範囲に含まれる。

但し、請求項の文字記述に加えられた新たな構成要件が排除された場合、権利侵害で訴えられた技術案が当該請求項の保護範囲に含まれるとの認定をしてはならない。

38、組成物の閉鎖式請求項(クローズドクレーム)について、権利侵害で訴えられた技術案が、請求項の全ての構成要件を含むことを基礎として、更に新たな構成要件を加えたとしても、特許権の保護範囲に含まれない。但し、権利侵害で訴えられた技術案に新たに加えられた構成要件が、組成物の性質と技術効果に実質的な影響を及ぼさない場合、又は当該構成要件が不可避な通常の含有量程度の不純物に属する場合は除外される。

39、機能的な構成要件を含む請求項について、権利侵害で訴えられた技術案が当該構成要件と同一の機能を実現するだけではなく、当該機能を実現させる構造、ステップと、特許明細書に記載された具体的な実施形態で特定された構造、ステップとが同一である場合、権利侵害で訴えられた技術案は特許権の保護範囲に含まれる。

40、後で獲得した特許権又は実用新案権は先行する特許権又は実用新案権に対して改良されたものであり、後で獲得した特許におけるある請求項に、先行する特許におけるある請求項に記載された全ての構成要件が記載され、また別途構成要件が加えられた場合、後で獲得した特許は従属特許に属する。従属特許の実施は、先行特許の保護範囲に含まれる。

次に掲げるものは従属特許に属する:

(1)後発製品の特許の請求項が、先行製品の特許の請求項の全ての構成要件を含んでいることを基礎とし、更に新たな構成要件を加えたもの。

(2)元の製品の特許の請求項を基礎とし、今まで発見されなかった新たな用途を発見したもの。

(3)元の方法の特許の請求項を基礎とし、新たな構成要件を加えたもの。

(三)均等侵害

41、特許権侵害の判断において、文言侵害が成立しないと認定した場合、均等論で権利侵害の有無を判断しなければならない。

42、均等論とは、権利侵害で訴えられた技術案における1つ又は1つ以上の構成要件が、文言上、請求項に記載された対応する構成要件とは異なるが、両者は均等な構成要件を有するものを指す。この場合、権利侵害で訴えられた技術案は特許権の保護範囲に含まれると認定しなければならない。

43、均等な構成要件とは、請求項に記載された構成要件と対比して、基本的に同一の手段を用いて、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を奏し、かつ、所属する技術分野における一般技術者にとって創造的な労働を経ずに連想できる構成要件を指す。

44、基本的に同一の手段とは、一般的に、訴えられた権利侵害行為の発生日前に、その特許が所属する技術分野で慣習上、よく置換される構成要件、及び作業原理が基本的に同一の構成要件を指す。

出願日後に現れた、作業原理と特許の構成要件が異なる構成要件は、訴えられた権利侵害行為の発生日に、所属する技術の分野における一般の技術者が容易に想到し得る置換の構成要件に属するため、基本的に同一の手段と認定することができる。

45、基本的に同一の機能とは、権利侵害で訴えられた技術案の置換手段によりもたらされた作用と請求項における対応する構成要件がもたらした作用が基本的に同じものであることを指す。

46、基本的に同一の効果とは、一般的に、権利侵害で訴えられた技術案の置換手段により奏された効果が、請求項における対応する構成要件が奏した効果と実質的に差異がないことを指す。

権利侵害で訴えられた技術案の置換手段が請求項の対応する構成要件と比較して、その技術的効果を明らかに向上させるか、又は低下させることにならない場合、実質的に差異がないと認定することができる。

47、創造的な労働を経ずに連想できるとは、すなわち、所属する技術の分野における一般の技術者にとって、権利侵害で訴えられた技術案の置換手段と請求項の対応する構成要件が相互に置換し得ることが明らかであることをいう。

48、手段、機能、効果及び創造的な労働の必要性に対して、順次判断をしなければならない。

49、均等な構成要件の置換は、具体的かつ対応する構成要件間の置換となるべきであり、技術案全体の置換ではない。

50、均等な構成要件とは、請求項に記載された若干の構成要件が権利侵害で訴えられた技術案中の1つの構成要件に対応することでもよく、また請求項に記載された1つの構成要件が権利侵害で訴えられた技術案中の若干の構成要件の組合せに対応することでもよい。

51、均等な構成要件の置換には、請求項における区別する構成要件の置換が含まれるほか、請求項の前提部における構成要件の置換も含まれる。

52、権利侵害で訴えられた技術案の構成要件と請求項に記載された構成要件とが均等か否かの判断については、侵害行為が発生した日を判断の時間的基準としなければならない。

53、請求項と権利侵害で訴えられた技術案に多数の均等な構成要件が存在する場合、その多数の均等な構成要件の重ね合わせにより、権利侵害で訴えられた技術案が請求項の技術構想と異なる技術案になり、又は権利侵害で訴えられた技術案が予想しなかった技術効果を取得した場合、一般的に、均等侵害を構成すると認定するのは適切ではない。

54、機能的な構成要件を含む請求項に対して、権利侵害で訴えられた技術案の対応する構成要件が同じ機能を実現するだけではなく、更に当該機能を実現する構造、ステップと、特許明細書に記載された具体的な実施形態で特定された構造、ステップとが均等である場合、均等な構成要件を構成すると認定すべきである。

上述の均等の判断について、特許の出願日を判断の時間的基準としなければならない。

55、数値範囲を含んでいる特許技術案について、権利侵害で訴えられた技術案で使用される数値と請求項に記載された対応する数値とが同じではない場合、均等を構成すると認定してはならない。

但し、特許権者は、権利侵害で訴えられた技術案で使用された数値が、技術的効果から見て、請求項に記載された数値と実質的に差異がないことを立証できる場合、均等を構成すると認定すべきである。

56、明細書又は図面のみにおいて描写され、請求項に概括的記載がなされていない技術案については、権利者が当該技術案を放棄したものと見なすべきである。権利者が均等侵害を理由にして、特許権の保護範囲に当該技術案が含まれる旨を主張する場合、この主張を認めない。

権利侵害で訴えられた技術案は明細書から明確に排除された技術案に属し、特許権者が均等侵害を構成する旨を主張する場合、この主張を支持しない。

57、権利侵害で訴えられた技術案の構成要件と請求項に記載された構成要件とが均等か否かを判断する時、訴えられた権利侵害者は特許権者が当該均等の構成要件をすでに放棄したため、禁反言を理由とする抗弁を認めることができる。

禁反言とは、特許の付与又は無効の手続において、特許の出願人又は特許権者が請求項、明細書に対する補正又は意見陳述の方式を通じて、請求項の保護範囲について限定的縮減又は部分的な放棄を行った後、特許権侵害訴訟において、均等侵害を構成するか否かを判断するとき、特許の出願人又は特許権者がすでに放棄した内容を再び特許権の保護範囲に含めることを禁じることを指す。

58、特許の出願人又は特許権者が行った保護範囲についての限定的縮減又は部分的な放棄は、新規性又は進歩性の欠如、必須の構成要件の欠如、請求項が明細書でサポートされていない、及び明細書が十分に開示されていない等、権利を付与することができない実質的な瑕疵を解消するためでなければならない。

特許の出願人又は特許権者がその特許包袋書類の補正理由を説明できない場合、その補正は権利付与に対する実質的な瑕疵の解消を図るためであると推定することができる。

59、特許権者が請求項の保護範囲に対して行った部分的な放棄は明示されるべきであり、かつ、書面陳述、特許包袋書類、法的効果が生じた文書にも記録されていなければならない。

60、禁反言の適用は、権利侵害で訴えられた者からの請求を前提にし、訴えられた者が特許の出願人又は特許権者の反言に関する証拠を提出しなければならない。

人民裁判所は法により、特許権者の反言を記載している証拠を取得した場合、すでに調べて明らかになった事実に基づいて、禁反言の適用により請求項の保護範囲に必要な制限を加えて、合理的に特許権の保護範囲を特定することができる。

三、意匠権の保護範囲の特定

61、意匠権の侵害紛争事件を審理する時、まず意匠権の保護範囲を特定しなければならない。意匠権の保護範囲は図面又は写真で示されている当該特許製品の意匠を基準とする。意匠の簡単な説明及びその設計要点、特許権者による無効手続及びその訴訟手続における意見陳述、国務院専利行政部門の要求に応じて特許出願手続において提出したサンプル又は模型等は、意匠権の保護範囲に関する解釈に用いられる。

62、意匠公報に設計要点の記載がない場合、意匠権者は書面資料を提出することにより、意匠の独創的部分及びその設計内容を説明することができる。

63、当事者が提出した特許製品の意匠のデザイン変化?発展の証明に用いる関連証拠は、保護範囲を特定するとき、考慮に入れることができる。

64、意匠権の保護範囲を特定するときは、使用状態参考図と変化状態の製品の使用状態図を区別しなければならない。

使用状態参考図とは、国務院専利行政部門が審査段階において、簡単な説明に意匠製品の使用方法、用途若しくは機能を明確に記載していない開発された新製品、又は若干の使用方法、用途や機能が明確ではない製品に対して分類を付与することができない場合、当該製品を正確に分類するため、意匠の出願人に提供を求める図面である。使用状態参考図は、意匠の保護範囲の特定に用いられないが、製品の類別を特定する要素とすることができる。

変化状態の製品の使用状態図は、製品の意匠の保護範囲を特定する根拠とすべきである。

65、意匠権が色彩の保護を求める場合、保護を求める色彩を意匠権の保護範囲を特定する要素の1つとしなければならない。即ち、権利侵害の判断においては、その意匠に含まれる形状、模様、色彩及びそれらの組合せと権利侵害で訴えられた製品の対応する形状、模様、色彩及びそれらの組合せを総合的に対比しなければならない。

66、意匠特許権が色彩の保護を求める場合、意匠の保護範囲を特定するために、意匠権者は国務院専利行政部門が発行し又は認可した関係する証拠を提出しなければならない。必要な場合、国務院専利行政部門の特許包袋書類にある色彩内容と照らし合わせなければならない。

67、全体の視覚効果に影響しない製品のサイズ、材料、内部構造は、意匠権の保護範囲から排除すべきである。

68、類似意匠権5の保護範囲は各独立した意匠によりそれぞれ特定される。基本設計とその他の類似する設計はいずれも意匠権の保護範囲を特定する根拠とすることができる。

類似意匠とは、同一製品に関する複数の類似意匠について、一意匠として出願して意匠登録を受けたものを指す。複数の類似意匠において、そのうちの1つを基本意匠として指定する必要がある。類似する基本意匠とある類似する意匠との間に同一又は類似したデザインの特徴を具えており、かつ、両者間の相違点は、局部における細かい変化、当該類別の製品の常用設計、設計ユニットの重複する配列又は単なる色彩要素の変化等にある。

69、セット製品(訳注:日本の組物に類似)の全体意匠と当該セット製品を組み合わせた各意匠がいずれも、当該意匠の包袋書類中の図面又は写真に表されている場合、その権利の保護範囲は当該セット製品を組み合わせた各製品の意匠又は当該セット製品の全体意匠により特定される。

セット製品の意匠(訳注:日本の組物の意匠に類似)とは、同一分類に属し、かつ、セットで販売又は使用する製品の2つ以上の意匠を一意匠として出願して意匠登録を受けたものを指す。

四、意匠権の権利侵害判断

70、意匠製品と同一又は類似する種類の製品に、登録意匠と同一又は類似する意匠を採用した場合、権利侵害で訴えられた意匠は、意匠権の保護範囲に含まれると認定しなければならない。

71、意匠権侵害を判断するとき、意匠登録公告に開示された当該意匠の図面又は写真と権利侵害で訴えられた意匠若しくは権利侵害で訴えられた意匠を具現化した図面又は写真を対比しなければならず、意匠権者が提出した意匠特許製品の実物と権利侵害で訴えられた意匠を対比してはならない。但し、当該特許製品の実物が意匠公告に開示されている図面又は写真の意匠製品と完全に一致している、又は意匠権者が国務院専利行政部門の意匠出願手続きにおいて図面又は写真の内容をより理解できるように提出を要求されたサンプル又は模型と完全に一致しており、かつ、当事者双方に異議がない場合には除外する。

72、 意匠権侵害を判断するとき、一般消費者の視覚を通して直接対比して観察しなければならず、拡大鏡、顕微鏡などのその他のツールを使用して対比してはならない。但し、図面又は写真に開示されている製品の意匠が意匠出願時に拡大されたものであれば、権利侵害の対比時にも権利侵害で訴えられた意匠製品について相応に拡大して対比しなければならない。

73、 意匠権侵害を判断するとき、先ずは権利侵害で訴えられた技術案と登録意匠製品が同一又は類似する種類の製品に属するか否かを審査しなければならない。

74、意匠製品の用途(使用目的、使用状態)に基づき、製品の種類が同一又は類似するか否かを認定しなければならない。

製品の用途を特定する時、次の順序を参考に関連要素を総合的に特定することができる:意匠の簡単な説明、国際意匠分類表、製品の機能と製品販売、実際の使用状況などの要素。

意匠製品が権利侵害で訴えられた意匠製品の用途(使用目的、使用状態)と共通性がない場合、意匠製品と権利侵害で訴えられた意匠製品は同一又は類似する種類の製品に属しない。

75、意匠権を侵害したか否かの判断は、同一又は類似するか否かを基準としなければならず、一般消費者が混同誤認するか否かを基準としてはならない。

76、意匠特許製品の一般消費者の知識水準と認知能力をもって、意匠が同一又は類似するかを判断しなければならず、当該意匠が所属する技術分野における一般のデザイナーの観察力を基準としてはならない。

77、一般消費者とは、仮説された「人」であり、その知識水準と認知能力の両面について限定する。

一般消費者の知識水準とは、通常、一般消費者の意匠出願日前における同一の種類又は類似する種類の製品の意匠及びそれが常用設計手法に対する常識的な理解を指す。

一般消費者の認知能力とは、通常、一般消費者の意匠製品の形状、模様及び色彩の違いに対する一定の識別力を指すが、製品の形状、模様及び色彩の軽微な変化にまで注意が行き届かない。

意匠製品に対する一般消費者の知識水準と認知能力について具体的に限定する時、具体的な意匠製品に対して行わなければならず、出願日前の当該意匠製品のデザイン発展の過程も考慮しなければならない。

78、意匠が同一又は類似するか否かを判断する時、意匠創作者の主観的な視点に従ってはならず、一般消費者の視覚効果に従わなければならない。

79、意匠が同一又は類似を構成するかを判断する時には、全体的に観察し、総合的に判断することを原則とする。すなわち、登録意匠、権利侵害で訴えられた意匠の可視部分全部のデザインの特徴について観察し、製品意匠の全体的視覚効果に対し影響を与えうる全ての要素について総合的に考慮した後に判断しなければならない。

次の状況は、通常、意匠の全体的視覚効果に対し更に影響を有する。

(1)製品の正常使用時に、容易に直接観察できる部位がその他の部位に相対する。

(2)先行意匠のデザインの特徴と異なる部分が、意匠におけるその他のデザインの特徴に相対する。

80、権利侵害で訴えられた意匠が登録意匠と全体的視覚効果の上で差異がない場合、両者は同一と認定しなければならない。全体的視覚効果の上で実質的な差異がない場合には、両者は類似すると認定しなければならない。具体的には:

(1)両者の形状、模様、色彩等の全体的視覚効果に差異がない場合には、両者は同一であると認めなければならない。

(2)両者の形状、模様、色彩等の全体的視覚効果は完全に同一ではないが、明らかな差異がない場合、両者は類似すると認めなければならない。

(3)両者の形状、模様、色彩等の全体的視覚効果が異なり、明らかに差異がある場合、両者は同一ではなく、類似もしないと認めなければならない。

81、同一又は類似を判断する時、製品の機能、技術的効果により決定されるデザインの特徴を考慮しない。

製品の機能、技術的効果により決定されるデザインの特徴とは、製品の機能、技術的効果の実現に限られる、又は唯一の設計を指す。

82、立体製品の意匠について、通常、形状は全体的視覚効果にさらなる影響を与えることになるため、同一又は類似を判断する時、形状を重点としなけ製品を製造、販売、輸入してはならない。

88、特許出願公開日、実用新案、意匠登録日の前の実施行為については、特許権侵害行為に属さない。

特許出願公開日から特許公告日の間は、すなわち、特許権の一時的な保護期間で、当該特許を実施した組織又は個人は、権利者に対し適当な使用料を支払わなければならない。その実施行為の判断については、特許権侵害に関する法律規定を参照して適用することができる。

特許出願日に出願人が請求した保護範囲と、特許付与公告時の特許権の保護範囲が一致せず、権利侵害で訴えられた技術案は全て上述の2つの保護範囲に含まれる場合、権利侵害で訴えられた者は一時的な保護期間内に当該発明を実施したと認定しなければならない。権利侵害で訴えられた技術案がそのうちの1つの保護範囲にしか含まれない場合、権利侵害で訴えられた者は一時的な保護期間内に当該発明を実施しなかったと認定しなければならない。

89、特許又は実用新案特許製品の製造とは、請求項に記載された製品技術案が実現されたことを指し、製品の数量、品質は製造行為の認定に影響しない。

次の行為は特許又は実用新案特許製品の製造行為と認定しなければならない:

(1)異なる製造方法をもって製品を製造する行為。但し、方法で製品を特定する請求項は除く。

(2)他人に製造を委託する、又は製品上に「監督製造」という表示をする等の参与行為。

(3)部品を組み立てて特許製品にする行為。

90、意匠特許製品の製造とは、意匠権者が国務院専利行政部門へ意匠出願時に提出した図面又は写真の中の当該意匠特許製品が実現されたことを指す。

91、特許又は実用新案特許製品の使用とは、請求項に記載された製品の技術案の技術的機能が応用されたことを指す。

92、特許権又は実用新案権の侵害製品を部品又は中間製品とし、別の製品を製造した場合、特許製品の使用に属すると認定しなければならない。

93、方法の特許の使用とは、請求項に記載された方法特許の技術案の各ステップが全て実現されることを指し、当該方法を使用した結果は特許権侵害を構成するか否かの認定には影響しない。

94、意匠特許製品の使用とは、意匠製品の機能、技術性能が応用されることを指す。

意匠権者の禁止権には、他人がその意匠特許製品を使用する権利を禁止することは含まれていない。

95、他人の特許権を侵害する製品をレンタルに用いた場合、特許製品の使用に属すると認定しなければならない。

96、特許製品の販売とは、特許権の保護範囲に含まれる権利侵害で訴えられた技術案の所有権、又は方法特許により直接製造する製品の所有権、又は意匠特許を含む製品の所有権を売主から有償で買主に移転することを指す。

抱き合わせ販売又はその他の方法で上述製品の所有権を移転譲渡し、別の形で商業利益を取得した場合も、当該製品の販売に属する。

97、特許権又は実用新案権の侵害製品を部品又は中間製品とし、別の製品を製造した後、当該別の製品を販売した場合、特許製品の販売に属すると認定しなければならない。

意匠権侵害製品を部品とし、別の製品を製造、販売した場合、意匠特許製品の販売行為に属すると認定しなければならない。但し、意匠権侵害製品が別の製品の中で技術機能のみを有する場合には除外する。

技術機能のみを有するとは、当該部品が最終製品の内部構造を構成しており、最終製品の正常使用中には視覚的効果をもたらさず、技術機能の作用だけを有することを指す。

98、他人の特許権を侵害した製品の販売行為が実際に発生する前に、権利侵害で訴えられた者が他人の特許権を侵害した製品を販売するとの意思表示をした場合、販売の申出に当たる。

広告を打つ、商店のウインドーに陳列する、インターネット又は展示会に展示する等の方法で他人の特許権を侵害した商品を販売するとの意思表示をした場合、販売の申出と認定することができる。

99、特許製品の輸入とは、製品の特許権請求の保護範囲に含まれる製品、方法特許により直接獲得した製品又は意匠特許を含む製品が、空間上の境界を越えて域外から域内に運び込まれる行為を指す。

100、方法の特許が製品に及ぶとは、方法の特許が付与された後、如何なる組織又は個人も特許権者の許可なく、生産経営を目的として当該方法の特許を使用してはならないほか、生産経営を目的として当該方法特許に従い直接獲得した製品を使用、販売の申出、販売、輸入してはならないことを指す。

101、方法の特許により直接獲得した製品とは、原材料、物品を方法の特許の請求項に記載されている全てのステップの構成要件どおりに加工処理を進め、原材料、物品に構造上又は物理化学の特性上明らかな変化を生じさせて獲得した原始製品を指す。

上述の原始製品を更に加工、処理して獲得した後続製品は、すなわち、当該原始製品を中間部品又は原材料として、加工、処理してその他の後続製品とするため、当該方法の特許を使用して直接獲得した製品に属すると認定しなければならない。当該後続製品に対する更なる加工、処理は、当該方法の特許により直接獲得した製品の使用行為に属しない。

102、特許法第61条規定の「新製品」とは、国内外で最初に製造された製品で、当該製品は特許出願日前にすでに存在した同類の製品と対比して、製品の構成成分、構造又はその品質、性能、機能面に明らかな区別があることを指す。

製品又は製品を製造する技術案が特許出願日より前に、国内外の公衆に周知されている場合、当該製品は特許法で規定する新製品には属さないと認定しなければならない。

新製品に属するか否かは、特許権者がこれを立証しなければならない。特許権者は証拠を提出して当該製品が特許法で規定する新製品に属すると初歩的な証明をした場合、立証責任を果たしたと見なす。

103、同様の製品とは、権利侵害で訴えられた技術案が新製品の製造方法を実施して直接獲得した原始製品の形状、構造又は成分等と実質的に差異がないことを指す。

同様の製品に属するか否かは、権利者がこれを立証しなければならない。

104、用途発明について、権利者は、権利侵害で訴えられた者が権利侵害で訴えられた技術案の製造、使用、販売、販売の申出、輸入に当該特許の特定用途を用いたことを証明しなければならない。

(二)共同侵害行為6

105、二人以上で特許法第11条に規定された行為を共同で実施し、又は二人以上が互いに分業し協力して、特許法第11条に規定された行為を共同で実施した場合、共同侵害行為となる。

106、他人を教唆、幇助して特許法第11条に規定された行為を実施した場合、実施者と共同侵害者となる。

107、特許権侵害製品を部品として、別の製品を製造し販売した場合、権利侵害で訴えられた者が分業し協力していれば、共同侵害行為となる。

108、他人の物の特許の実施に専用される材料、専門設備又は部品を提供、販売若しくは輸入した、又は他人の方法の特許の実施に専用される材料、機器若しくは専用設備を提供、販売若しくは輸入した場合、上述の行為者は実施者と共同侵害行為をしたことになる。

109、他人が特許法第11条に規定された行為を実施するために、場所、倉庫、運輸等の便利な条件を提供した場合は、実施者と共同侵害行為をしたことになる。

110、技術譲渡契約の譲受人が譲渡契約の約定に従い技術を譲受し、これを実施して他人の特許権を侵害した場合、譲受人は権利侵害責任を負う。

六、特許権侵害の抗弁

(一)   特許権の効力についての抗弁

111、権利侵害で訴えられた者が、特許権存続期間が超過した、特許権者が放棄した、法的効力が生じた文書で無効が宣告されたことをもって抗弁をする場合、相応の証拠を提出しなければならない。

112、特許権侵害訴訟において、権利侵害で訴えられた者は、特許権が特許付与要件を満たさないため無効宣告されるべきことをもって抗弁をする場合、その無効宣告請求は専利復審委員会へ提出しなければならない。

(二)   特許権濫用の抗弁

113、権利侵害で訴えられた者が、特許権者が悪意により特許権を取得しかつ、特許権を濫用して権利侵害訴訟を提起したことをもって抗弁をする場合、相応の証拠を提出しなければならない。

特許権侵害訴訟において、特許権の無効が宣告された場合、特許権の濫用だと安易に認定すべきではない。

114、悪意による特許権の取得とは、特許権の保護を受けるべきでない発明創作であると明らかに知りながら、故意に法律を回避する又は不正な手段により特許権を獲得し、その目的が不当な利益を獲得する又は他人の正当な実施行為を妨害することにあることを指す。

次の状況は悪意と認定できる:

(1)出願日前に既に存在する国家規格、業界規格などの技術規格をもって特許出願し、特許権を取得した場合。

(2)ある地区で広く製造又は使用されている製品と明らかに知りながら特許出願し、特許権を取得した場合。

(三)権利非侵害の抗弁

115、権利侵害で訴えられた技術案の構成要件と請求項に記載された全ての構成要件を対比して、請求項に記載された1項目又は1項目以上の構成要件が足りない場合、特許権の侵害にはならない。

116、権利侵害で訴えられた技術案の構成要件と請求項の中の対応する構成要件を対比して、1項目又は1項目以上の構成要件が異なり、また均等でもない場合、特許権の侵害にはならない。

本条第1項でいう構成要件が異なり、また均等でもないとは、次のことを指す:

(1)当該構成要件により権利侵害で訴えられた技術案が新しい技術案を構成する場合。

(2)当該構成要件が機能、効果の上で明らかに請求項の対応する構成要件よりも優れており、かつ、所属する技術の分野の一般の技術者が、この変化には実質的な改善があり、容易に知り得るものではないと認める場合。

117、権利侵害で訴えられた技術案が、請求項の中の個別の構成要件を省略した、又は簡単若しくは低級の構成要件を請求項中の相応する構成要件に置き換え、請求項における当該構成要件と対応する性能と効果が捨てられ又は明らかに低下させたことで、技術案が劣化した場合、特許権の侵害にはならない。

118、如何なる組織又は個人が、生産経営を目的とせずに特許製品を製造、使用、輸入した場合、特許権の侵害にはならない。

(四)権利侵害と見なさない抗弁

119、特許製品又は方法の特許により直接獲得した製品が、特許権者又はその許諾した組織、個人により販売された後、当該製品が使用、販売の申出、販売、輸入された場合、特許権の侵害と見なされない。それには次のものが含まれる。

(1)特許権者又はその実施権者が中国域内でその特許製品又は方法の特許により直接獲得した製品を販売した後、購買者が中国域内で当該製品を使用、販売の申出、販売した場合。

(2)特許権者又はその実施権者が中国域外でその特許製品又は方法の特許により直接獲得した製品を販売した後、購買者が当該製品を中国域内に輸入し、その後中国域内で使用、販売の申出、販売した場合。

(3)特許権者又はその実施権者がその特許製品の専用部品を販売した後、当該部品を使用、販売の申出、販売、又はそれを組み立てて特許製品を製造した場合。

(4)方法の特許の特許権者又はその実施権者がその方法特許の実施に用いるための専門の設備を販売した後、当該設備を使用して当該方法の特許が実施された場合。

120、特許出願日の前にすでに同一の製品を製造し、同一の方法を使用し、又は製造、使用に必要な準備をし、かつ、従来の範囲内で製造、使用を継続する場合、特許権の侵害とは見なされない。

上述の状況の下で製造した特許製品又は方法の特許により直接獲得した製品を使用、販売の申出、販売した場合も特許権の侵害とは見なされない。

121、先使用権の適用条件:

(1)製造、使用に必要な準備をしていた。すなわち、発明創作の実施に必要な主要な製図若しくは製造工程の技術書が完成済みである、又は発明創作の実施に必要な主要な設備若しくは原材料を製造若しくは購買済みである。

(2)従来の範囲内のみでの製造、使用。「従来の範囲」には、特許出願日前にすでに有する生産規模及びすでに有する生産設備又は生産の準備を利用して達成できる生産規模が含まれる。従来の範囲を越える製造、使用行為は特許権の侵害となる。

(3)先に製造された製品、先使用の方法又は設計は、先使用権者自らが独立して研究を完成させた、又は合法的手段により特許権者若しくはその他独立研究完成者から取得したものでなければならず、特許出願日前に剽窃、窃取又はその他の不当な手段で獲得したものではない。権利侵害で訴えられた者が不法に獲得した技術又は設計をもって主張する先使用権の抗弁は、これを支持すべきではない。

(4)先使用権者は自己が先に実施した技術を、企業と共に移転譲渡する以外には移転譲渡できない。すなわち、先使用権者が特許出願日後に、そのすでに実施した、又は実施に必要な準備となる技術若しくは設計の移転譲渡をした、又は他人の実施を許諾し、権利侵害で訴えられた者が当該実施行為は従来の範囲内での継続した実施に属すると主張した場合、これを支持すべきではない。但し、当該技術又は設計が従来の企業と共に移転譲渡又は承継した場合は除く。

122、一時的に中国の領土、領海、領空を通過する外国の運輸設備が、その所属国と中国が締結した約定若しくは共に参加している国際条約に基づき、又は互恵原則に従い、輸送設備自身の必要のためにその装置と設備において関連する特許を使用する場合、特許権の侵害とは見なさない。

但し、一時的な越境には交通運輸設備を用いた特許製品の「積み替え」、つまりある交通運輸設備から別の交通運輸設備へ移す行為は含まれない。

123、専ら科学研究と実験のために関連する特許を使用することは、特許権の侵害とは見なされない。

専ら科学研究と実験のためにとは、特許技術案自体に対し専門的に科学研究と実験を行うことを指す。

特許技術案自体に対して行う科学技術研究、実験と科学技術研究、実験中における特許技術案の使用は、次のように区別しなければならない。

(1)特許技術案自体に対して行う科学研究実験とは、その目的は他人の特許技術の研究、検証、改進して、従来の特許技術の基礎上に新しい技術的効果を産み出すことにある。

(2)科学研究、実験過程における特許技術案の使用とは、その目的が他人の特許技術の研究、改進ではなく、特許技術案をその他の技術の研究実験を進める手段として利用する、又は特許技術案を実施した商業将来性を研究する等、その結果が特許技術と直接関係しない行為である。これらの行為は特許権の侵害となる。

本条第1項の関連する特許を使用する行為には、当該研究実験者が自ら関連する特許製品を製造、使用、輸入する又は方法の特許を使用する行為を含み、他人が当該研究実験者の為に関連する特許製品を製造、輸入する行為も含む。

124、行政の審査、認可に必要な情報を提供するために、特許薬品又は特許医療機械を製造、使用、輸入する場合、及び専らそのために特許薬品又は特許医療器械の製造、輸入する場合は、特許権の侵害とは見なされない。

行政の審査、認可に必要な情報とは、《中華人民共和国薬品管理法》、《中華人民共和国薬品管理法実施条例》及び《薬品登録管理弁法》等の薬品管理に関する法律法規、部門規章などが規定する実験資料、研究報告、科学技術文献等の関連材料を指す。

(五)従来技術の抗弁及び従来意匠の抗弁

125、従来技術の抗弁とは、特許権の保護範囲に含まれると訴えられた全ての構成要件が、ある従来技術案における対応する構成要件と同一又は若しくは均等である、又は所属する技術分野における一般的技術者が権利侵害で訴えられた技術案は従来技術と所属分野における周知の常識的な簡単な組み合わせであると認めた場合、権利侵害で訴えられた者が実施した技術は従来技術に属し、その行為は特許権を侵害しないと認定しなければならない。

126、従来技術とは、特許出願日前に国内外で公衆に周知されている技術を指す。2008年の改正特許法実施前の特許法規定により出願し、権利を取得した特許権については、その従来技術は以前の特許法の規定に基づき特定する。

127、抵触出願(訳注:日本の拡大先願に相当)は従来技術に属さず、従来技術の抗弁理由とはできない。但し、権利侵害で訴えられた者がその実施が抵触出願した特許に属すると主張する場合、本指南第125条の従来技術の抗弁に関する規定を参照して処理することができる。

抵触出願とは、如何なる組織又は個人が特許権者の発明創作と同様の発明創作を出願日前に国務院専利行政部へ出願し、出願日以後に公布された特許出願書類又は公告された特許書類に記載されている特許出願を指す。

128、従来意匠の抗弁とは、権利侵害で訴えられた技術案の意匠がある従来意匠と同一若しくは類似する、又は権利侵害で訴えられた技術案の意匠がある先行意匠と当該製品の慣用のデザインの簡単な組み合わせで、権利侵害で訴えられた技術案の意匠が従来意匠となるため、権利侵害で訴えられた者の行為は意匠権を侵害しないことを指す。

129、従来意匠とは出願日以前に国内外で公衆に周知された意匠を指し、国内外で出版物の形式により公開されたもの、使用等の方法により公開された意匠も含む。但し、2008年の改正特許法実施前の特許法の規定に基づき出願し、意匠権を取得したものについて、その従来意匠は、以前の特許法の規定に基づき特定しなければならない。

130、権利侵害で訴えられた者がその従来意匠の実施をもって抗弁をする場合、権利侵害訴訟において主張し、従来意匠の関連証拠を提供しなければならない。

131、権利侵害で訴えられた者がその従来意匠の実施をもって抗弁をする場合、特許意匠と従来意匠を対比するのではなく、権利侵害で訴えられた技術案の意匠が従来意匠と同一又は類似するか否かを判断しなければならない。

132、権利侵害で訴えられた者がその実施した意匠が抵触出願であると主張する場合、権利侵害で訴えられた意匠と抵触出願を対比しなければならない。権利侵害で訴えられた意匠が抵触出願と同一又は類似する場合、権利侵害で訴えられた者の行為は意匠権を侵害しない。

(六)合理的な出所の抗弁

133、生産経営を目的として、特許権者の許可を経ていないことを知らずに製造し、販売した特許製品又は方法の特許により直接獲得した製品を使用、販売の申出又は販売する行為は、特許権の侵害行為に属する。

使用者又は販売者はその製品の合理的な出所を証明できる場合、賠償責任を負うことはないが、権利侵害差止めの法的責任は負わなければならない。

合理的な出所とは、使用者又は販売者が合法的な仕入れルートから、合理的な価格で権利侵害で訴えられた技術案を購買し、関連する伝票を提供することを指す。

北京市高級人民法院

 2013年9月4日

 

1 本翻訳は律盟知識産権代理有限公司の翻訳を基に多少の修正を加えて作成したものである。